DIYでラックやテーブルやイスを作る。その最後の仕上げとなるのが塗装です。シンプルな作品でも丁寧に塗装するとグンと高級感が増す重要な作業です。
せっかく作ったからには失敗しないように綺麗に塗りたい!そんな方のために、ナローゲージショップで販売している鉄道模型用のレイアウトベースを塗装する手順と、試行錯誤して行きついたおすすめの塗料と塗り方のコツをご紹介します。
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おすすめの塗料は、ワシン水性ポアーステイン!
臭いが少なく水性なので、希釈や刷毛の洗浄を水でできるのもポイントです。昔から家業のリフォームでも使っています。
水性ステインの中では安価で、カラーバリエーションも豊富で発色も良く、綺麗に木目を引き立ててくれます。 | 着色からニス塗りの間に必要です。 塗らないと仕上がりに大きな差が出ますので、必ず塗ることをおすすめします。 |
仕上げに塗るニスです。鏡面仕上げにしたい時は透明シリーズを使いましょう。 | 仕上げに塗るニスです。テカテカしたものが好みじゃない方はつや消しシリーズを使いましょう。
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「ワシン 水性ウレタンニス」は透明とつや消しの2種類あります。当店では"透明"を使っていますが、色つきシリーズもあります。
おすすめの刷毛は、ハンディ・クラウンのINNOVAシリーズ!
ハンディ・クラウンのINNOVAシリーズです。水性用と油性用、塗料用とニス用など用途や使う塗料により刷毛は異なります。
刷毛は1本100円以下のものから約1,000円のものまであります。ハンディ・クラウンのINNOVAシリーズ(50mm幅のもの)は300円~800円くらいです。
画像右のゴールド調でちょっと偉そうなやつが約800円でした。水性、油性、塗料、ニス、全てに使えるこの刷毛は、他とは毛が違うようです。まだ使っていませんが仕上げのニス用に使う予定です。
ワシン水性ポアーステイン"マホガニーブラウン"を塗ってみます
サンディングシーラーとニスも、もちろんワシンシリーズで統一しました。今回は光沢感を出したかったのでウレタンニスは"ツヤあり"を使いましたが、"ツヤなし"もあります。お好みで使いわけてください。
刷毛
水性用とニス用2本です。水性用と油性用、着色用とニス用は必ず分けてください。
ヤスリ
粗目(#40~#100)、中目(#120~#240)、細目(#320~)と様々な種類がありますが、材質によっては粗目から使った方が良い場合もあります。
今回使った材料は室内リフォーム用の檜の羽目板だったので#240からで充分でした。
綺麗に塗るための14の工程
今回の塗装工程は、着色3回、ヤスリ5回、サンディングシーラー2回、ウレタンニス3回です。
絶対にこうしなければいけないわけではなく、あくまで試行錯誤して辿りついた私のやり方です。これからやってみよう!という方の参考になれば嬉しいです。
- 空研ぎペーパー #240をかける (材質によっては#120から)
- 着色1回目
- 空研ぎペーパー #240をかける
- 着色2回目
- 空研ぎペーパー #400をかける
- 着色3回目
- サンディングシーラー 1回目
- TAMIYA フィニッシングペーパー P600番をかける
- サンディングシーラー 2回目
- ウレタンニス 1回目
- TAMIYA フィニッシングペーパー P800番をかける
- ウレタンニス 2回目
- TAMIYA フィニッシングペーパー P1000番をかける
- ウレタンニス 3回目
塗り方のコツ1 下地処理が仕上がりを変える!
各工程で塗り始める前(塗り重ねる前)には必ずペーパーをかけてください。ペーパーの番手は徐々に上げるのがポイントです。そして1番初めのヤスリをかける前に、濡らした雑巾などで材料の表面を拭くのも重要です。
少し水分を含ませることで、木の繊維を毛羽立させてヤスリがけがしやすくなります。もちろん最初だけでなくヤスリをかけたあとは必ず粉を綺麗に拭き取ります。
材料によってはとの粉をつかいましょう
との粉は木材の導管(木目の溝)を埋めて表面を平滑にするものです。木材の種類によっては導管が深いものもあるので、その場合はとの粉を使って"目止め"といわれる工程で綺麗に仕上がります。
塗り方のコツ2 希釈した塗料で塗り重ねる!
水性塗料は原液そのままでも充分塗れますが、綺麗に仕上げるコツとしては希釈した塗料で塗り重ねることです。そうすることによって塗りムラをなくすことができます。水で簡単に希釈できるのも水性塗料のメリットです。
1回目と3回目の比較
左が1回目、右が3回目です。どちらも完全に乾いた状態です。1回目に比べてかなり濃くなったのがわかると思います。ここまでの間に3回ペーパーをかけているので表面はかなりなめらかな手触りです。
希釈の比率は感覚でやっていますが、あまり希釈し過ぎると好みの色になるまで何回も塗り重ねなければならないので注意してください。
着色は1回で決めようとしない
3回塗り重ねるのを基本としています。わざわざ希釈して塗り重ねるのは、塗りムラをなくすためだけではありません。塗り重ねる間にペーパーかけを行い、よりクオリティーの高い下地を作るためでもあります。
塗り方のコツ3 ニスの前には、必ずサンディングシーラーを塗る!
"きれいな塗装"において、シーラーは必須です。ニスを塗る前の下塗りとして使うことで塗膜の厚みを出すことができます。
また木の導管に入りやすく、研磨性が高いので表面を平滑にしやすくなります。
サンディングシーラーは必ず塗ってください。仕上がりにかなり差が出ます。乾くと透明になり、ニスほどではありませんが多少ツヤ感が出ます。
ペーパーのかけすぎに注意
サンディングシーラーを塗り重ねる場合は必ずペーパーをかけます。着色と違って力を入れすぎると下の塗装が剥げてしまうので注意が必要です。一方向から表面を撫でるように優しくかけましょう。表面にうっすら白い粉が出てきたらそれ以上かけてはいけません。
塗り方のコツ4 塗料をつけすぎない!
塗料を含ませるのは、画像のように刷毛の半分までにしてください。含ませたら刷毛を容器の淵に押し当てて、垂れないようにしっかりと塗料を落としましょう。
刷毛に含ませる塗料の量は少ない方が綺麗に塗れます。これは着色、シーラー、ニス全てに共通します。もちろん少なすぎると塗れませんが、多いとダマや気泡ができます。
塗り方のコツ5 刷毛は一方向に動かす!
刷毛は寝かせすぎないようにして、木目に沿って一方向から動かすのがポイントです。この時刷毛を押し付け過ぎないように注意して、力は一定に保ってください。
特にウレタンニスを塗る場合には絶対に刷毛を往復で動かさないでください。
塗り方のコツ6 ウレタンニスはできるだけ1回で決める!
ウレタンニスを塗る際は、1回で決めると綺麗に仕上がります。とはいっても、1回で塗りきれない部分もどうしても出てきます。その場合は素早く塗り直すのがポイントです。ニスはすぐに表面が固まり始めるため、ちょっとでも時間がたってから塗り直そうとすると刷毛ムラが出てしまいます。
画像のように目線の高さに合わせて確認するとしっかり全体が塗れているのがわかりやすいです。
ウレタンニスのペーペーのかけ方
ウレタンニスも3回塗り重ねますが、ペーパーのかけ方はサンディングシーラー以上に表面を撫でるように優しくかけましょう。ここで下の塗料を剥がしてしまうと修正がかなりやっかいなので細心の注意を払ってください。表面がうっすら白くなるくらいで充分です
ウレタンニス1回目と3回目の比較
ニスまで塗り重ねるの?と思うかもしれませんが、画像を見れば違いは一目瞭然です。光沢感が増して表面の手触りも全然違います。そして塗膜が厚くなるので耐久性も増します。
ウレタンニスのつやありとつやなしの比較
"おすすめの水性塗料"でも紹介しましたが、ワシンの水性ウレタンニスには"透明シリーズ"と"つや消しシリーズ"の2種類があります。
ここではふたつの仕上がり具合を比較します。
反射具合と写りこみ具合で違いがよくわかると思います。触った感じもつや消しの方はサラッとしています。
光沢が出て見栄えも変わる透明クリヤーと比べると、つや消しクリヤーは木部保護のためだけに塗るといった感じです。お好みと何を塗るかによってうまく使い分けてください。
その他の色の塗装例 ワシン水性ポアーステイン"オリーブ"を塗ってみました
"ワシン"の木部着色剤はカラーバリエーションがとても豊富です。当店の商品では基本的にマホガニーブラウンを使用していますが、お客様からのご要望で"オリーブ"で塗装したこともありました。
綺麗に塗れるようになるといろいろな色で塗装したくなるので参考までに仕上がり具合を紹介します。
ウレタンニスは透明クリヤー(つやあり)を使用しました。深みのある色で渋くてかっこいいです。
同じ作品でも色を変えるとガラッと雰囲気が変わります。
塗装・未塗装の比較
冒頭にも書きましたが、当店では鉄道模型用のレイアウトベースを制作しています。きっかけはお客様からのご要望でしたが、塗装をすることによってここまで雰囲気が変わるとは思いませんでした。
もちろん未塗装には未塗装の魅力があります。木の風合いと純粋な檜の香りを楽しむことができるので、このあたりは好みが分かれると思います。
ポアーステインとオイルステインの違いは?
"ステイン"とは"着色剤"という意味で、今回ご紹介したポアーステイン以外にオイルステインがあります。オイルステインにも水性と油性がありますが、ポアーステインとは特徴や塗り方が異なりますので簡単に解説したいと思います。
水性ポアーステインの特徴
- 臭いが少ない
- 扱いやすい
- 希釈や刷毛の洗浄を水でできる (←意外と重要)
- ニスは水性・油性・ラッカー、どれでもOK
正直デメリットはあまり見つかりません。あえて挙げるなら"乾燥が早い"というのが広い面積を塗る場合にはちょっと気を使うかなと。あとは屋外で使うものや耐久性を求められるものには向いていないという点だと思います。ただそれもニスを重ね塗りすることでカバーできます。
油性オイルステインの特徴
- 塗料の密着力が高い
- 光沢力が出やすい(濡れツヤ感がある)
- 臭いがきつい
- 希釈はシンナー、洗浄はペイントうすめ液を使う
- ニスは油性かラッカー、水性は使えない
臭いがきついのと希釈と洗浄が面倒なのが敬遠してしまうポイントかもしれません。ただオイルステインの風合いや濡れツヤ感も味があって良いと思います。オイルステインにはニスが含まれているタイプもあり、二度塗りすればなかなかのツヤ感は出ます。
水性オイルステインの特徴
- 臭いが少ない
- 希釈や刷毛の洗浄を水でできる (←意外と重要)
- ニスは水性・油性・ラッカー、どれでもOK
- ポアーステインと比べてやや木目が隠れる
オイルステインの色味と仕上がりを水性で再現したものです。オイルステインでありながら臭いが少なく、希釈と洗浄が水でOKなのは助かります。
オイルステインの塗り方
- 全体がびちゃっとなるくらい少し多めの塗る
- 素早く布で拭き取る
オイルステインの塗り方の特徴は"拭き取る"ことです。拭き取るタイミングによって色の濃さは変わりますが、濃くしたい場合には塗って拭き取るを繰り返します。
二度塗りの注意点は、完全に乾かしてしまうと二度目の染み込みが悪くなるということです。触ってみて手につかない程度に乾いたタイミングで二度塗りするようにしましょう。
塗る面積が小さい場合や初心者の方は、刷毛を使わずにオイルステインを布に染み込ませて塗るのがおすすめです。刷毛で塗ってステインが多く溜まってしまった箇所はムラになります。布で刷り込むようにして染めることでムラのない綺麗な着色ができます。
オイルステインもニス仕上げは重要
ポアーステインもオイルステインも特徴と塗り方は違いますが、同じ"ステイン"です。ステインは"着色剤"であって基本的には保護成分は入っていません。ニスで上塗りしないと色移りしたり、傷や水分に弱いままです。必ず最後はニスで仕上げるようにしましょう。
スプレータイプは熟練者向き!?
水性と油性以外にも刷毛塗りかスプレーかという選択肢もあります。画像は私が試行錯誤している時に購入したアサヒペンの油性 ウレタンニススプレーとスプレータイプのサンディングシーラーです。
結論から言うと、スプレータイプは初心者の方にはおすすめしません。製品自体は素晴らしいのですが、綺麗に仕上げるためにはかなりのテクニックが必要です。
私も何回かチャレンジしましたが断念しました・・・。
断念した3つの理由
1. 作業場所を選ぶ
刷毛塗りと違い仕上がりが環境に大きく左右されます。室内ではまずやらない方が良いです。
ベランダなども隣近所と隣接している場合には細心の注意が必要です。
2. コストパフォーマンス
水性の刷毛塗り塗料は水で希釈ができるうえに無駄なく使えますが、スプレータイプはそうはいきません。1本あたりが高価なうえに、試し吹きなどちょっと練習しているとあっという間になくなります。
3. 液だれしやすい・均一に塗りにくい
これは私の技術不足という噂もありますが、とにかく綺麗に仕上げるのが難しかったです。
自作のスピーカーボックスやオリジナルのギターを制作している方などは上級者の方が多く、スプレーを使って綺麗に塗装しているので練習あるのみかもしれません。
ワシン水性ポアーステインの塗り方と6つのコツのまとめ
今回はあくまで私が辿りついた水性ポアーステインの塗り方のコツです。塗料の種類や何を塗装するかで異なる部分はあると思います。
最後に6つのコツをおさらいしておきましょう。
- 下地処理が仕上がりを変える!
- 希釈した塗料で塗り重ねる!
- ニスの前には、必ずサンディングシーラーを塗る!
- 塗料をつけすぎない!
- 刷毛は一方向に動かす!
- ウレタンニスはできるだけ1回で決める!
材料の種類や、屋内、屋外どちらで使うものを塗るのか、また何に使うものを塗るのかによって塗料の種類や工程も変わります。
すべてに共通して言えることは、ペーパーがけやシーラー、との粉などの下地作りに手を抜いてはいけないということ!
塗り方やコツも大切ですが、下地作りで全てが決まるといっても過言ではありません。せっかく一所懸命作ったのですから最後まで手間を惜しまず最高の作品に仕上げてください。