ナローゲージショップの店長が、PECO互換のポイントレールを製品化するためにつくった極秘マニュアルを更に掘り下げて「完全自作マニュアル」にしました。
この記事では、PECOのSL-400 or SL-404(共にコード80)を引き抜いて、ポイントレールを作る手順を徹底解説します。PECOフレキやセットラックと互換性があるポイントレールを、市販品にはない仕様で作るための方法を公開します。
各パーツの作製方法は以下の記事をご参照ください。
関連記事>>自作ポイントレールを徹底解説!半径100mmの分岐器も製作可能!
MEの引き抜きレールとPECOレールでは、推奨するはんだの順序が異なるので、ここではPECOレールの「はんだ順序」に焦点を当てます。
ポイントレール製作手順(PECO仕様)🌼
店長が作った㊙!?マニュアルです。
仮止め、はんだの順番を図解しています。再現可能であれば商品化も夢ではない、
そんな希望が詰まった資料です。ブログ記事と解説動画そしてnote記事が、
少しでも工作の参考になれば幸いです。https://t.co/3CVNEoPOWP— ポイントレール製作室@広報担当 (@narrowgaugeshop) 2020年5月14日
PECOのHOeフレキシブルレール(コード80)を使用してハンドメイドしました。PECOの金属(絶縁)ジョイナーで、HOeレール各種と接続可能です。 通電方式は、PECOエレクトロフログ(=篠原模型方式)と同様にしました。
【PECOレール仕様】自作ポイントレールのはんだ順序を徹底解説【極秘マニュアル】
動画でも詳しく解説しました。本記事とあわせてご覧ください。
この記事では、PECOのHOe用(コード80)フレキシブルレールを使って、R140の片開き(弾性)ポイントレールを作ります。各パーツを製作して、PCボードのギャップを切った状態から解説します。
この記事をお読みいただく前に、まずは関連記事をご一読ください。
- MEの引き抜きレールとPECOフレキシブルレールの違い
- 予備知識!ポイントレールの構造と名称
- PECOのレールで作る!自作ポイントレールのはんだ順序
- 脱線(干渉)の原因と解決方法
- ガードレールを設置しても脱線(干渉)する場合には!?
- ポイント切り換え部のギャップの入れ方
・…━… 目次 …━…・‥
MEの引き抜きレールとPECOフレキシブルレール(HOe用)の違い
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まずは、マイクロエンジニアリングの引き抜きレールとPECOレールの違いから。
PECOレールの方が細いです。実際に測ると約0.4mmの差があります。
ベンダーで曲げ癖をつけたり、レール底部をヤスる際には、マイクロエンジニアリングの引き抜きレールとはまったく感覚が異なるのでご注意ください。
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同じ長さのレールを、同じ目盛りにセットして曲げてみました。
MEの引き抜きレールは、しっかり曲げ癖がついています。つまりMEの感覚でPECOを曲げると曲げが足りません。
しかしPECOの感覚でMEを曲げると、曲げ過ぎてしまうので注意が必要です。
※曲げ癖を戻すとレールは歪みます。
予備知識!ポイントレールの構造と名称
はんだ順序に入る前に、予備知識としてポイントレールの構造と名称をおさらいします。画像は、片開き分岐器の概略図です。
- 黒=ストックレール
- 水色=トングレール
- 赤=リードレール
- 紫=ウイングレール
- オレンジ=主レール
- 緑=クロッシング(フログ)
- 黄色=ガードレール
当店で制作しているのは、トングレールとリードレールとウィングレールが一体化されている"弾性ポイント"です。
PECOのレールで作る自作ポイントのはんだ順序
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最初にはんだする順序と箇所を確認してください。当店の経験上、この順序で決めていくと失敗しません。
1~18を以下の6つのステップに分けて解説します。
- 基本線側のウイングレール(E)・ストックレール(A)・主レール(B)・クロッシング(F) (①~④)
- 分岐線側のウイングレール(e)・ストックレール(a)・クロッシング(f) (⑤~⑦)
- 基本線側、分岐線側の主レール(B/b)・ストックレール(A/a) (⑧~⑪)
- 分岐線側の主レール(b)と分岐線側の外レール (⑫~⑭)
- 基本線側、分岐線側のガードレール(G/g) (⑮~⑯)
- 基本線側、分岐線側のトングレール(C/c) (⑰~⑱)
ステップ1 基本線側のウイングレール・ストックレール・主レール・クロッシングをはんだする
まずは、①~④の工程です。最初に基本線側のウイングレール(E)を決めます。そこに底部をヤスったストックレール(A)と主レール(B)を合わせ、クロッシング(F)を決めます。
①基本線側のウイングレール(E)をはんだする
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分岐線側ポイント部(c、d、E)を台紙(治具)のケガキ線に合わせます。分岐線側トングレール(c)に、ストックレール(A)のヤスった位置を合わせ、ストックレール(A)、主レール(B)、クロッシング(F/f)をマスキングテープで仮固定します。
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分岐線側のクロッシングへの"通り"をしっかり確認してから、ウイングレール(E)をはんだします。
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ウイングレール(E)をはんだする際に、1mm厚くらいの簡易スペーサーでフランジウェイを測りましょう。
わたしは、PCボードの位置を切り抜いた台紙(治具)の破片を利用しています。ちなみに、台紙(治具)に使っている材料は、低発砲塩ビ板(1mm)という素材です。
②③基本線側のストックレール(A)と主レール(B)をはんだする
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位置が決まった分岐線側トングレール(c)に、ストックレール(A)のヤスった部分をぴったり合わせます。この時、念のために分岐側のストックレール(a)も仮置きして、トラックゲージで測り、ケガキ線とズレていないか確認します。
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主レール(B)とクロッシング(F)のゲージをしっかり確認してはんだします。
※画像は、間違えてウイングレールの長さを調整する前にはんだしてしまったものです・・・。
④基本線側のクロッシング(F)をはんだする
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クロッシング(F)と主レール(B)のゲージをしっかり確認してはんだします。
※画像は、間違えてウイングレールの長さを調整する前にはんだしてしまったものです・・・。
ステップ2 分岐線側のウイングレール・ストックレール・クロッシングをはんだする
⑤~⑦の工程です。"工程1"と同様に、まず分岐線側のウイングレール(e)を決めます。そこに底部をヤスったストックレール(a)と主レール(b)を合わせ、クロッシング(f)を決めます。
⑤分岐線側のウイングレール(e)をはんだする
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クロッシング(f)とのフランジウェイを確認して、基本線側ポイント部(C、D、e)を台紙(治具)のケガキ線に合わせます。この時、基本線側トングレール(C)がポイント切り換え部と合っているかも確認します。
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基本線側のクロッシングへの"通り"をしっかり確認してから、ウイングレール(e)をはんだします。
⑥分岐線側のストックレール(a)をはんだする
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位置が決まった基本線側トングレール(C)に、ストックレール(a)のヤスった部分をぴったり合わせます。基本線側ストックレール(A)とのゲージをしっかり確認してはんだします。
⑦分岐線側のクロッシング(f)をはんだする
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クロッシング(f)と主レール(b)のゲージをしっかり確認してはんだします。
ステップ3 基本線側、分岐線側の主レールとストックレールをはんだする
⑧~⑪の工程です。基本線、分岐線それぞれの主レールとストックレールをはんだします。
⑧基本線側の主レール(B)をはんだする
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基本線側のリードレール(D)とのゲージをしっかり確認してはんだします。
⑨基本線側のストックレール(A)をはんだする
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基本線側のトングレール(C)とのゲージをしっかり確認してはんだします。
⑩分岐線側の主レール(b)をはんだする
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分岐線側のリードレール(d)とのゲージをしっかり確認してはんだします。
⑪分岐線側のストックレール(a)をはんだする
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分岐線側のトングレール(c)とのゲージをしっかり確認してはんだします。
ステップ4 分岐線側の主レールと分岐線側外レールをはんだする
⑫~⑭の工程です。ここまでくると、主要箇所は決まっているので、はんだも楽になってきます。
⑫分岐線側の主レール(b)をはんだする
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分岐線側のクロッシング(f)とのゲージをしっかり確認してはんだします。
⑬⑭分岐線側の外レールと分岐線側の主レール(b)をはんだする
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それぞれのゲージをしっかり確認してはんだします。
クロッシング(フログ)の通過を確認する
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トングレールとガードレール以外の主要箇所のはんだが終わったら、台車を転がしてスムーズに通過できるか確認します。
クロッシング(フログ)に干渉したりせず、滑らかに通過できれば問題なしです。
分岐線側に進入させる際、意識的に遠心力をかけながら通過させるとこうなりませんか?
クロッシング(フログ)部で、脱線して基本線側に流れてしまう現象です。ただ、今の時点ではこうなってしまっても問題ありません。分岐線側のガードレールを設置する前は、ほぼこうなります。
次の工程でガードレールを適切な位置に設置すれば脱線しなくなるのでご安心ください。
ステップ5 基本線側、分岐線側のガードレールをはんだする
⑮~⑯の工程です。別記事でも解説しましたが、ガードレールは非常に重要です。特に分岐線側(g)は、ガードレールを適切な位置に設置することで、フログ先端に干渉する、もしくは脱線するのを解消してくれます。
⑮分岐線側のガードレール(g)をはんだする
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分岐線側は台車を転がして、クロッシング(フログ)部で脱線しなくなる位置を探ります。画像にあるように、クロッシング(フログ)先端よりもポイント切り換え側の位置になるはずです。
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ガードレールが適切な位置になっていれば、意識的に遠心力をかけながら通過させても先ほどのように脱線することはないはずです。
脱線はしなくなったけど、車輪が干渉して"カタッ"となってしまう場合は、もう一度弾性ポイント部~分岐線側への"通り"を確認しましょう。クロッシング(フログ)の先端が内側に入りすぎている可能性が高いです。
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脱線しなくなったのを確認したら、主レール(b)との隙間をしっかり確認してはんだします。
⑯基本線側のガードレール(G)をはんだする
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片開き分岐器の場合、基本線側は直線なので先ほどのように神経を使う必要はありません。主レール(B)との隙間をしっかり確認してはんだします。
ガードレールを設置したら、もう一度台車を転がして確認しましょう。これだけ動かして脱線(干渉)しなければ問題なしです。
もし車輪が干渉して"カタッ"となってしまう場合は、もう一度弾性ポイント部~分岐線側への"通り"を確認しましょう。
考えられる原因は以下のどちらかの可能性が高いです。
- クロッシング(フログ)の先端が内側に入りすぎている。
- ウイングレールの角が内側に入りすぎている。
ステップ6 基本線側、分岐線側のトングレールをはんだする
⑰~⑱の工程です。最後の工程はトングレールをはんだします。 ポイントを切り換える重要な箇所であり、走行に与える影響も大きいので注意が必要です。
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まずはPCボードにギャップを入れます。ここだけ後回しにした理由は、弾性ポイントの位置が決まってから現物合わせにした方が失敗がないからです。
ギャップの位置は、それぞれポイントを切り替えた時にトングレールの外側にくるようにします。空ける間隔は約2mmです。画像のようにPCボード(2mm幅)をスペーサーにすると便利です。
⑰基本線側のトングレール(C)をはんだする
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先に基本線側のトングレールから決めます。ストックレールにしっかり密着させて、ギャップが内側に見えていないか確認してはんだをします。はんだは流し過ぎないよう注意してください。流し過ぎるとストックレールまで一緒にはんだされてしまいます。
⑱分岐線側のトングレール(c)をはんだする
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分岐線側も注意点は同じです。ストックレールにしっかり密着させて、ギャップが内側に見えていないか確認してください。ここもはんだを流し過ぎないように注意します。
はんだをする前に、ポイントを分岐線側に切り替えてみます。(2mmくらいずらしてみる)
分岐線側から台車を転がして、車輪がトングレールに干渉しないか確認します。ギャップを入れる際にしっかり2mm空けていれば問題ないはずですが、少しでも接触するとショートするので念には念を入れましょう。
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トングレールのはんだを終えたところです。最終的に画像のように、真ん中に1箇所とトングレールの外側に1箇所ずつギャップが入っていればOKです。
残りの箇所にはんだをする
6つのステップを終えて、18箇所にはんだをした状態です。あとは残りの箇所にはんだするだけの半完成状態。
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半完成状態とはいえ、はんだをする時は必ずトラックゲージを当て、確認しながら作業します。
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すべての箇所にはんだをする前に実際に動力車を使って走行確認をします。"何回も台車を転がして確認してたじゃない!"と思うかもしれませんが、台車を指で転がすのと実際に動力車を走らせるのは別ものです。
通電確認(ギャップが正しく入っているか)の意味もあるので、このタイミングで最終確認するのがおすすめです。
仕上げにはんだとPCボードのクリーニング
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最後はワイヤーブラシではんだとPCボード枕木を綺麗にします。キサゲ刷毛でもできますが、ワイヤーブラシの方が効率良くできるのでおすすめです。
PECO仕様の半径140mm自作ポイントの完成!
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静かに治具から取り外し、余分なレールをカットしたら完成です。
PECOのフレキシブルレールを引き抜いて使っているので互換性もあり、接続もPECOのジョイナーがそのまま使えます。
まとめ ~どこまでPECOに近づけるのか!?
実際に作ってみるとMEの引き抜きレール以上に神経を使い、難易度も高かったので、【完全版】自作ポイントレールを徹底解説!半径100mmの分岐器も製作可能!より更に細かく解説しました。
"PECOのレールでレイアウトを作っているけど、もっと小半径のポイントが欲しい!"という方の参考になれば嬉しく思います。
最後に「自作ポイントレールはどこまで市販品に近づけるのか!?」ということで、実際にPECOのフレキシブルレールと接続し、HOナロー用ポイントレール(半径228mm)との走行比較で締めたいと思います。
【走行比較】自作ポイントレールはどこまでPECOに近づけるのか!