オーダーレイアウトベースをご購入いただいたお客様より、完成のご報告とお写真をいただきました。
ぜひブログで紹介させて欲しいとお願いしたところご快諾いただき、コンセプトや設定、仕様などを送っていただいたのでご紹介します。その名も「磐北鉄道 吉祥線 (いわきたてつどう きちじょうせん)」
当店が制作したレイアウトベースについては関連記事をご覧ください。
関連記事>>【ジオラマレイアウト】オーダーレイアウトベースの制作記|篠原模型のレールを使ったHOナロー仕様
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「磐北鉄道 吉祥線」を制作するきっかけは?
小学生の時、雑誌「鉄道模型趣味」で見たレイアウトに憧れ、いつか自分も作ってみたいと思い、高校生の頃、ストラクチャーや、Mr.KATO、足尾のフォードなど角材とペーパーを使用し作っていました。また、その頃、僅かに残っていた鉱山鉄道、林用軌道、トロッコ、廃線巡りも行い、線形や風景などイメージしていました。しかしながら中々実現に至りませんでしたが、数年前、ナローゲージショップ様のサイトを拝見し、「これならば出来るのでは?」と思い、連絡を取ったのが最初です。
約40年の間に、鉄道模型の世界が変化し、また、インターネットによりレイアウトに関する情報を容易に知ることができ、時代の進化を大きく感じました。
「磐北鉄道 吉祥線」の設定は?
昭和30年代から私が生まれた昭和40年頃の晩秋~初冬、東北地方の国鉄亜幹線から鉱山へ分かれる内燃私鉄(軽便鉄道)をイメージしました。看板類に磐城、岩代、新町等の名称が見られます。
「磐北鉄道 吉祥線」の仕様や制作方法について
お客様より「ストラクチャー」、「枠・構造」、「地面・石垣」、「樹木・田んぼ」など各項目について仕様詳細を送っていただきました。現在レイアウトを制作している方はもちろん、これから挑戦しようと思っている方にも大変参考になると思います。
約40年の年月を経て蘇ったストラクチャーたち
一部を除き40年前に作成したものです。基本、角材とペーパーで自作し、窓枠や引き戸、瓦屋根は当時高価だったエコーモデルや外国製を使用しました。モルタル壁は、工作用石膏に蚊取り線香を混ぜるなど試行錯誤しました。当時、ウェザリングまで行い、底深い缶箱に6棟が約40年眠っていました。今では6棟も作る気力はありませんので、これが手元にあったこそ出来たとも思っています。
なお、設置にあたり、室内照明、内部装飾(外から見える範囲)を行いましたが、道路に映る灯りを考え、建物の上部や2階部分にLED光源がくるように浮かして設置しました。なお、建物は取り外し可能とし飽きたら別の建物にする事も可能です。(もう作る気はありませんが)
自作以外に1棟だけサンケイ製のストラクチャーを使用しましたが、近年のレーザーカット技術によりカッチリ正確に仕上がりました。
なお、レイアウトに付き物の駅舎ですが、棟数・スペースを考慮、また市街地の軽便鉄道という事で思い切って省きました。(作る気力がなかった事もありますが。)
その他、バス乗り場のトタン板はかなりピッチが過大ですがお菓子の仕切りを使用、ハエ叩き(通信線、高圧線)・踏切は津川洋行製、街中の電柱は竹ひごを使用し碍子はビーズで表現しました。
なお、空間ができてしまった奥の箇所には、吉祥寺駅前ハモニカ横丁のような路地を作り、LEDで赤ちょうちんを表現してみました。
当店も協力できた枠と構造
ナローゲージショップ様へ、防塵用アクリルケースの最大が収まるサイズ(900×600)を注文いたしました。また、平面でなく、起伏ある地形を表現したかったので、レール敷設を独立(独立懸架)としていただくよう手間をお願いいたしました。これにパワーパックを接続していただき、少なくとも走行品質に気を遣く事が不要になった事は気持ちの上で非常に大きかったです。
なお、軽量化と配線を考慮し、レイアウト内部に多くの空間を作る事とし、地表、崖、河原の表現は極力厚くならないようにしました。
40年前の工作ねんどで表現した地面と小石で作った石垣
40年前に購入した工作用ねんど(日本ミラコン産業製)を使用しましたが、非常にリアルな凸凹の表現ができ、濃度により、畝、崖などの表現も楽にできました。
なお、石積みの石垣は、昔から表現したかったものであり、小石(小)を基板としたプラパンに木工用ボンドを使用し積み上げを表現しました。線路道床バラストほか従前に買い貯めたものです。
季節的に、晩秋~初冬をイメージしたので、草木は黄色、赤の系統としましたが、タミヤの情景ストラクチャペイント(草カーキ)を塗ったところ、よい具合に、冬の草木の少ない荒れた土壌の表現に向いていたため、あえて緑色のラインケンなど使用しませんでした。
砂利道は手芸店で売っていた観葉植物用の砂を使用し、筆やスポイトを使用しタイヤのわだちなど表現しました。(なお、スペースの関係上、一車線としたので行き違いは表現できません。)
試行錯誤した樹木と田んぼ
樹木は季節の表現を大きく左右する要素として、市販やスポンジなど試行錯誤しましたが、結果的には、幹は電気コードねじり、葉っぱは「モス」を使用しました。本来は、葉の落ちた雑木林を表現したかったのですが、叶わず紅葉を表現したため地面は冬、樹木は秋というアンバランスな風景になってしまいました。
なお、一本立ちを避け、雑木林の表現とするため、樹木を2本~3本にプラパンで土台を繋げ、その状態で葉っぱ(モス)を盛ってゆきました。樹木は、枝振りにより大きく左右され難しいですね。
なお、柿の木は初冬の表現として是非やりたかった樹木でしたが、枝振りなどまだ検討の余地はあると思います。柿の実は娘が使用しているビーズを使用し、軒下には干し柿を表現しました。
稲刈りを終えた田んぼも季節感の表現で重要であり、表現に関しても試行錯誤しましたが、結果的に、100円ショップで購入したネイルブラシのブラシ部分を短くカットして使用しました。ただし、地面に色を塗ることができず、消化不良でありました。干している稲はKATO製のフィールドグラス(黄金色)を薄めた木工用ボンドで留め、カットして表現しました。
難易度が高い川の表現にも挑戦
河原の石や切り立った崖は、市販(KATO製)のものを使用し、お遊びとして娘の天然石(アクセサリー)を鉱山の鉱石と見立てて所々に隠し置きました。水の流れはモデリングウォーター(光栄堂)を使用、流れや水しぶきの表現をネットで勉強しましたが、なかなか上手く表現できませんでした。昔から水の表現は難しいですね。なお、ガータープレートは津川洋行製です。
ご家族の協力が光る小物類たち
生活感を出す為、小物類は数多く作成しました。(というか作って貰いました。)
自転車、バイク、屋台(寺田模型製)はネットやボビー売り場で見つけました。リヤカーは、手芸用のリングをタイヤに見立て、アルミ棒からの自作です。
ケロちゃん、サトちゃん、赤電話、丸型郵便ポスト、茶箱、ズタ袋、給油機、冷蔵庫、自転車に乗る人、ちびまるこちゃん等々は、樹脂粘土から作られており、妻と娘の労作です。二人に、画像と大きさ、質感を伝え、ミニュチュアフード作りの合間に作って貰いました。その為、外出しない休日は、一家でミニュチュア作りでした。
レイアウトは大好きなミニカーを表現できる場所
自身がボンネット型バス・トラックのマニアであり、レイアウトがその表現場所とも考えています。
かつてHOの世界ではミニカーは外車が殆どで、昭和のイメージに合った国産車が少なかったような気がします。その為、長年、国産のボンネット型バスやトラック、三輪トラックなどを収集し、また、ドイツのオペルブリッツは日本のボンネット型トラックに近い為、店で見かけると買い貯めてきました。
なお、一部は前面や荷台を改造し、日野やいすゞの表現を行いました。更に気分により積み荷を変えられるよう、鉱山用の材木、ミカン箱など用意しました。
重要だった"予行演習"
今回のレイアウト着工前に、300×600のレイアウトを1個作り、地面、崖、草木、樹木、川、砂利道などの表現や、制作進行の順番など確認しました。これにより、ストラクチャーのLED配線や橋台や橋脚の設置など進行状況を検討することができました。
ナローゲージショップより感謝を込めて
このたびはブログへの掲載をご快諾いただき心より感謝申し上げます。写真のご提供及びレイアウトに関する情報を事細かにまとめていただき大変助かりました。
配置されたストラクチャーが40年前に制作されたものと聞いた時は驚きました。また小物類はご家族の協力とのことで、家族総出で作り上げた素晴らしいレイアウトだと思います。
このような素敵なジオラマレイアウトに微力ながら携わることができたことは、鉄道模型屋冥利につきます。「レイアウトに完成はない」とよく言われますが、「磐北鉄道 吉祥線」の更なる発展を期待しております。