当店の「A3サイズ 小型ナローパイク レイアウトベース」をご購入いただいた埼玉県の湯川登紀雄様。
ある程度レイアウトが完成したとお聞きして、無理を承知で頼み込んでお写真と掲載許可をいただきました。贅沢にも制作者様の解説文と動画付きです。
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「一諷山鉄道」のイメージ
地方の山間に軽便鉄道が生き残り、各地から車両も受け入れ運行を続ける「一諷山(いっぷうさん)鉄道」。現在も地元の人々の生活には欠かせない鉄道であるとともに、昔を偲ぶ鉄道ファンも多く訪れている……という「妄想」のもとでつくり続けています。
レイアウト制作は土台が重要!
「よいレイアウトベースに出会いました」
レイアウト制作の成功は、一にも二にもレイアウトベースのよしあしにかかっていると思います。これまで大小いくつものレイアウトをつくっては壊し、壊しては再挑戦を繰り返してきましたが納得がゆかなかった。それはひとえに、レイアウトベースに恵まれなかったからです。ほとんどは自前でつくったため、たとえB4、A3サイズ程度のパイクでも素人の木工作業には限界があります。ゆがみが出たり見栄えが悪かったりなど、どうしても思うようになりません。
その点、ナローゲージショップさんのレイアウトベースは非常に満足のゆくものです。指物師がつくったような正確な工作で見栄えのよい仕上がりは、制作意欲を大いにかきたててくれたものです。
買い求めたのは、「A3サイズの小型ナローパイク (PECOフレキシブルレール&ポイントレール/パワーパック付き)」と「専用アクリルケース」です。奥行が約30センチなので、背の低い本棚の上に据えられる。さらに、乾電池式のパワーパック内蔵ですから、どこへでも持ち運べます。
見栄えのよさとちょうどよいサイズ感、機動性などの利点が、飽きずにつくり続けることができた秘けつだと思います。大きいと作業量も増えて「お荷物」になり、途中で挫折しかねません。コンパクトゆえに、細かいところまでつくり込むことができたのだと思います。
ベースの塗装とバラスト撒き
制作の最初は、レイアウトベースに茶色のアクリルカラーを全面(レール、枕木を含む)に塗布。これが下地となる。バラストは、アクリル塗料の「メディウム」にバラスト用の砂を混入し、枕木の間に盛るように塗りつける。こうするとバラストが土に埋もれた感じが出る。その上からアクリル塗料を数色塗り重ね、場所場所によってそれらしい色にする。そのあと、レール上面の塗料を耐水ペーパーではがす。その後はできるだけ多く試運転を繰り返し、手持ちのすべての車両が問題なく走行できるように調整も行なう。
紙粘土で地形を成形する
フラットベースなので、右奥の一部に紙粘土を盛り、起伏をつける。こうすることで手前から見通せないようになり、レイアウトに広がりが出る。
自作のホームは赤沢森林鉄道風!ペーパーキットの待合所を置く
ホームは自作。長野県の赤沢森林鉄道のホームの雰囲気でつくる。簡易待合所はさんけいのペーパーキット(バス停)を使用。数人の乗客や駅員を配して雰囲気を演出する。
制作者様のセンスが光る!ストラクチャーとフィギュアの配置!
ポイント脇の小屋、奥の農業用物置はさんけいのペーパーキットを利用。出入り口や窓を少し開けた状態にするなど改造しながら組み立て、ウエザリングもほどこしている。引き込み線脇の駅舎は「廃車になった旧型客車を流用」という設定で、トミックスの「鉄コレ/ナローゲージ80」の製品を改造したもの。
フィギュアの使い方が秀逸!
要所要所にはさまざまなシーンの人形を配置した。人形の有無はレイアウトの臨場感を大きく左右する。
植栽にはKATO製品を使用
レイアウトには植栽も欠かせない。KATOのレイアウト制作用の製品を各種使用した。まだ「繁り」が足らないので、今後もっと増やす予定。
レイアウトの主役は気動車と機関車!
一諷山鉄道を走る車両群。気動車(DL)と機関車(SL)は市販品(各社の完成品、キット)を使用。完成品はウェザリングする。気動車は鉄コレだが長さを3分の2ほどに縮め、片ボギー化したり、短尺の動力ユニットに換装したりしている。客車はペーパーで自作したもの。いずれにも、さまざまなポーズの人形を乗せてリアリティーを出している。
情景制作は、風景をイメージして脳内で熟成させること!
「ほとんどのテクニックは我流」
ようやく満足のゆく状態――写真を撮れるまでに要した期間は約1年半。ただし、ほとんどが週末だけの作業です。そのようなゆっくりとしたペースのほうが拙速にならず、気に入らなければ何度でもやり直すことも苦になりません。
制作に関してのテクニックといえるものはありません。ほとんどが我流で、材料もかつて購入したものやあり合わせのものなどを中心に利用しました。
建物は市販品で、さんけいという会社のペーパー製品 模型制作キット『みにちゅあーとショップ』を利用しました。品揃えが豊富で、1/80(87)サイズの駅舎や民家、小屋など「昭和」なストラクチャーが揃っています。これらをそのまま組み立てて使うのではなく、サイズを縮めるなど多少の改造と、ウエザリングをほどして仕上げています。
情景制作は、つくる前にとことんイメージを膨らませることが大切だと思います。古い写真を見たり、往時の鉄道動画を視て、これだと思う風景をイメージして脳内で熟成させてから作業にとりかかると、手のほうが勝手に動いてくれるのです。
一諷山鉄道の今後の展望は・・・?!
【鉄道模型】気動車が走るHOナローパイク「一諷山鉄道」
このレイアウトは、これからも「建設中」です。あそこを変えたい、今度はここに児童公園をつくりたい……。小さいながらもイメージは膨らみます。
一諷山鉄道の次の一手は、地方の小電鉄(標準軌)の山間の小駅とそこから分岐する軽便鉄道(軌間762mm)というテーマのレイアウト制作です。今回ご紹介いただいたパイクをつくり込みながら、そのかたわらで計画を実現してゆきたいと思っています。サイズは最低でも900mm×600mmかその一回り大きいくらいのもので、16.5mmのエンドレスと9mmのエンドレス+ループ線などを組み合わせたいなと妄想中です。
これからもナローゲージショップさんのお世話になり続けます。
編集後記
見出し以外の文章は全て制作者様からいただいたものを使用させてもらいました。実名での掲載許可および、すべての解説文においてご協力いただいた湯川様に心より感謝申し上げます。
ショップ冥利に尽きるお言葉の数々に、店長共々感動することしきりでした。今後の製作においても大きな励みとなります。お褒めの言葉に恥じないよう今後も一所懸命に制作を続けて参ります。
素晴らしい作品に触れて・・・
特にウェザリングとストラクチャ―やフィギュアの配置、地形の微妙な高低が秀逸でセンスが光ります。情景制作が不得手な私たちにはすべてが羨ましい限りです。角地に配置された駅は当店店長が思わず剽窃しかねないほど絶妙です。解説文にもある通り、一流の芸術家やアスリートよろしく、まさに「手が勝手に動いた」ことが見て取れるバランスと完成度です。
「レイアウト制作に終わりはない」という言葉がありますが、これからもお楽しみいただければ嬉しいです。当作品の更なるバージョンアップを楽しみにしています。この度は貴重なお時間を割いて資料をご提供いただき、ありがとうございました。
レイアウトベースの原点
当店のレイアウトベースの隠れたテーマとして、心穏やかに自分の世界に没頭して、自分自身と向き合い、癒しのひとときを作ってほしいという思いがあります。かつて当店店長が壁にぶつかり、再び歩き出す勇気を取り戻せたのはレイアウトベース(ミニパイク)がきっかけでした。情報過多で多様化した時代にこそ、自分だけの静かな時間が必要だと、当店は考えています。
こんなレイアウトベースを作ってほしい、ここを追加して、ここを省いてなど、レイアウトベースに関するご意見ご要望をお寄せください。まだ試行錯誤の段階ですが、お客様のご要望がヒントとなり「車両展示台」or「展示台型レイアウトベース」を製作中です。